インフラツーリズムの推進

インフラツーリズムとは、橋梁やトンネル、港湾、通信施設など、普段は意識されることのない社会基盤を観光資源として活用する取り組みです。ダムや橋の見学ツアーとして知られることが多いですが、その本質は、日常の暮らしを支えるインフラの価値に気づくことにあります。
関門海峡エリアには、本州と九州を結ぶ関門橋、海底を貫く関門トンネル、国際貿易を支えてきた港湾施設、日本の通信の歴史を伝える門司電気通信レトロ館など、この地域の発展を支えてきたインフラが集中しています。しかし、地域に暮らす人にとって、それらはあまりに日常的な存在であるがゆえに、その価値が意識されることはほとんどありません。
関門DMOでは、こうした取り組みを通じて、地域のインフラへの理解と誇りを育む活動を進めています。

Our Approach

日常のインフラに、地域の価値を見出す

インフラツーリズムというと、ツアー商品の造成と集客が目的だと思われがちです。しかし、関門DMOが重視しているのは、その先にあるものです。関門海峡のインフラツアーは、体験人数や開催期間に限りがあり、大量の来訪者を受け入れるものではありません。それでもこの取り組みを続けるのは、当たり前の日常に埋もれたインフラの価値を、体験を通じて掘り起こすことに意味があると考えているからです。

観光客に対しては、関門海峡が「海をまたぐまち」であるという唯一無二の特性を伝える手段として。地域住民に対しては、自分たちの暮らしを支えるインフラの意味を再認識する機会として。この取り組みは、地域の内と外の両方に向けて、関門海峡の価値を届けるためのものです。

関門海峡インフラツーリズム推進連絡会議

Case 01関門海峡インフラツーリズム推進連絡会議インフラツーリズムの推進には、組織の枠を越えた連携が欠かせません。関門橋や人道トンネルはNEXCO西日本、港湾は自治体や国土交通省、通信施設はNTT西日本——インフラにはそれぞれの管理者がいます。関門DMOでは、こうした管理者の枠を越えた連携の場として「関門海峡インフラツーリズム推進連絡会議」を設立しました。

本連絡会議は、2025年11月の下関・北九州両市長会談がきっかけとなっています。両市がインフラを活用した関門エリアの魅力磨き上げに協力・支援することで合意し、その推進体制として発足しました。インフラ管理者、自治体、観光事業者が一堂に会し、取り組みの共有と連携を図っています。

さらに、この連絡会議を通じて、次世代を担う子どもたちへの取り組みも進めていきたいと考えています。関門橋やトンネルの成り立ちを知り、自分たちの暮らしがどう支えられているかを学ぶ機会をつくること。インフラを知ることが地域への誇りにつながり、その誇りがインフラを大切にする意識を育てる。そうした好循環を、関門海峡から生み出していきます。

関門鉄道トンネル バックヤードツアー

1942年に開通した関門鉄道トンネルは、世界初の海底トンネルです。現在も毎日多くの列車が行き交う現役のインフラでありながら、その内部は一般には公開されていません。このツアーでは、その非公開エリアを実際に歩いて見学します。
まず、事前予約制の関門トンネル記念館にて、トンネル完成までの歴史や門司地域の鉄道発展の歩みについて案内を受けます。その後、メンテナンス中の片側線のトンネル内へ。JR九州の職員による解説のもと、当時の掘削技術の痕跡を間近に体感するプログラムです。

トンネル内では、地質条件に応じて普通工法やシールド工法など異なる工法が採用されており、区間ごとにトンネルの断面形状が変わります。80年以上前の技術者たちがどのように地質と向き合い、工法を選択していったのか——その検討の痕跡を、自分の目で読み取りながら歩くことができるのが、このツアーならではの体験です。世界初の海底トンネルという事実は、地域にとって当たり前すぎて語られることがほとんどありません。このツアーが、その事実に改めて目を向けるきっかけになればと考えています。

関門国道トンネル バックヤードツアー

関門国道トンネルは、本州と九州を海底で結ぶ国道トンネルです。日々、多くの車両と歩行者が利用するこのトンネルの裏側には、一般には公開されていないメンテナンストンネルや給排気塔が隠れています。海底トンネルは、掘って終わりではありません。トンネル内には常に海水が染み出しており、24時間休むことなく排水し続けなければトンネルは維持できません。車の排気ガスを処理する給排気システムも、同じく止まることなく稼働し続けています。

このツアーでは、NEXCO西日本の職員の解説のもと、普段は立ち入ることのできないメンテナンストンネルの内部と、非公開の給排気塔を見学します。関門トンネル人道を「歩いて渡れる海底トンネル」として知っている人は多くても、その裏側で何が行われているかを知る人はほとんどいません。今この瞬間も、誰かの手でこのトンネルは守られている——そのことを実感できるツアーです。