瀬戸内国立公園の活用

関門海峡が瀬戸内海国立公園の一部であることは、地域に暮らす人にさえほとんど知られていません。北九州市側では、和布刈公園としての認識はあっても、国立公園であるという認識は行政関係者の間でも十分に浸透していないのが実情です。
関門DMOでは、この知られざる価値を広く発信し、観光資源として活用する取り組みを進めています。

Our Approach

「知られていない」を変えることから始める

国立公園という言葉から、多くの人は雄大な山岳や原生林を思い浮かべるかもしれません。しかし、関門海峡の国立公園エリアは駅から歩いて行ける場所にあります。生活圏と重なる山、歴史的建造物が残る港、日本新三大夜景にも選ばれた海峡の眺望。自然と暮らしと歴史が隣り合っていることが、この国立公園の最大の特徴です。

しかし、この価値はほとんど認知されていません。私たちはまず、体験を通じて「ここが国立公園である」という事実を届けることから始めています。森林インストラクターとともに自生する植物を観察するツアー、学芸員の解説で海峡の歴史を紐解くクルージング、海底トンネルを経由して両岸の低山を歩くローキング(LOWAKING)——体験した人の中に「ここは国立公園だったのか」という驚きが生まれること。それが、私たちの考える第一歩です。

この国立公園は、観光客だけのものではありません。地域に暮らす人にとっても、足元にある自然の価値を再発見する機会になります。まず知ってもらうこと、そして誇りに思ってもらうこと。関門DMOは、国立公園を地域全体の資産として活かしていくことを目指しています。

※ローキング(LOWAKING)とは、LOW(低山)とWALKING(歩く)をかけ合わせた関門DMOの造語です。

瀬戸内海国立公園(関門海峡地域)ストーリー検討業務

環境省が推進する「国立公園満喫プロジェクト」の一環として、瀬戸内海国立公園(関門海峡地域)の魅力を伝えるストーリーとブランディングテーマの検討を行いました。それまで関門海峡地域には、国立公園としての明確な「核」となるストーリーがありませんでした。指定理由や管理方針は存在するものの、自然・歴史・文化・アクティビティを複層的につなげた物語が整理されておらず、地域の強みを活かしたプロモーションが十分に機能していない状況でした。

本業務では、地域の自然環境や観光資源の調査・整理を通じて、「海底から山頂へ」という他に類を見ない地理的特性や、歴史・文化の多様性など、関門海峡地域が国立公園として持つ独自の価値を体系的に整理しました。これは、2034年の瀬戸内海国立公園指定100周年を見据え、地域が共通認識を持って保護と活用を進めていくための基盤となるストーリーです。

業務名:令和6年度 瀬戸内海国立公園(関門海峡地域)におけるストーリー検討業務
発注元:環境省 九州地方環境事務所
実施:一般社団法人海峡都市関門DMO

瀬戸内海国立公園 満喫ツアーの造成

国立公園としての関門海峡の魅力を体験として届けるために、自然や歴史、食を多角的に楽しむ5つのツアーを造成しました。ジビエと海の幸を味わうBBQ、森林インストラクターと歩く植物探索、学芸員の解説で巡る歴史クルージング、海底トンネルを経由して両岸の低山を歩くローキング(LOWAKING)、狩猟の現場を体験するスタディツアー。それぞれ異なる角度から、国立公園・関門海峡の奥深さを体感できるプログラムです。さらに、5つすべてを制覇した参加者を「関門海峡マイスター」として認定する制度も設けました。一度の訪問で完結するのではなく、何度も足を運ぶ理由をつくることで、地域との継続的な関わりを生み出す仕組みです。

また、より気軽に参加できるプログラムとして、海面下約60mの関門トンネル人道を経由し、本州と九州の両岸から関門海峡の景観を楽しむ「山と海の感考ローキング」も開催しています。全長約7km、約3時間のコースを歩きながら、「ここが国立公園である」ことを自分の足で実感できる体験です。

関門海峡の潮流を学ぶクルーズ体験

関門海峡は、1日に4回、約6時間おきに潮流の向きが変わる、日本三大潮流のひとつに数えられる海峡です。その速さと複雑さから、現在でも海峡を通過する船舶には水先案内人(パイロット)の同乗が義務付けられています。源平合戦の時代から変わらない自然の力が、今もこの海峡を支配しています。

しかし、これほどのダイナミックな自然現象でありながら、潮流そのものを体験できる観光コンテンツはこれまで存在しませんでした。そこで関門DMOでは、単なる遊覧クルーズではなく、潮流の動きを文化的・教育的な体験として楽しめる海峡観光クルージングを造成しました。船上から潮の流れや行き交う船舶を間近に観察し、ガイドの解説を通じて関門海峡の自然の仕組みを学ぶプログラムです。